『猫の手も貸したい』書影

先日のTBSラジオ『伊集院光とらじおと』のゲストに
登場していたのが、作詞家の及川眠子氏。

Winkの『淋しい熱帯魚』に
やしきたかじんの『東京』や
エヴァの『残酷な天使のテーゼ』に『魂のルフラン』
など、数々のヒット曲を生んでいる作詞家の方です。

そこで紹介されていた、ご著書の
『猫の手も貸したい 及川眠子流作詞術』

下記のやり取りを聴いて、すっかり欲しくなりました。

及川:私はもう30年以上になるのですが、私たちが出てきた、新人だった頃には、ディレクターがこう、現場でね、いろいろ教えてくれたりとか、してたんですけど、今もう、あんまりそういうのが、ないみたいなんですよね。
伊集院:はいはいはい。
及川:コンペばっかりだとかね。何で自分が書いたものが駄目だったのか、というのが分からない…。なかなか若手の成長のしようがない。
伊集院:それは、小林亜星さんも仰っていて、とにかくチャンスはいっぱいできたと。それでいて、一生に一度できたものが、まぐれ当たりするようなことが、いくらでもできたのは幸せなことだけど、2回目がやれるような知識をもらったりするような機会は、ほぼナイんだっていう…。
及川:そうなんです。
伊集院:じゃぁ、そういう時に、何があればいい? ということで恐らく、いろんなテクニックだとか、コツだとか、入り口の、きっかけとなることが書かれている本だと思うのですけど……もったいなくないですか?
及川:いや、でも、結局それ(作詞)を支えているのは、感性だったりセンスだったりするんですけど、それは教えられないんですよ。だから、技術だったらいくらでも教えられるんで、あのぉ…「どうぞ、好きにお使いください」みたいな感じです。
伊集院:スゴイ……。

  TBSラジオ『伊集院光とらじおと』9月10日放送より抜粋引用

恥ずかしながら、この放送を聴くまで、歌は知っていても
及川さんのことをほとんど知らなかった私ですが、
「最後の職業作詞家」とまで言われる大ベテランが、その
テクニックを、「もったいなくないですか?」と言わせる
ほど書き込んだ著作とあれば、興味のわかないわけがない
ですよね。

さらに、帯に書かれた下記の文言がグッときました。

ひらめきと感性だけじゃ、作詞でメシは食えない!

いやまったく、「ひらめきと感性」に乏しい私としては
渡りに舟のお言葉です。
及川さんの技術、確かに学ばせていただきます!

というわけで、早速本を開くと、
下記のような項目が並んでいて、
いきなり参考になります。

  • 「フレーム」と「ボックス」が、詩の世界と言葉を決める
  • 「2番以降」が書けない人の弱点とは?
  • 「何を書けばいい?」と思った人には詩は書けない

この中で「フレーム」と「ボックス」について
少しだけ引用して、説明を補足させていただきます。

 (前略)書きたいイメージを頭の中で映像的なものとして切り取って、自分なりの情景を作ります。
 これが「フレーム」です。
 このフレームが決まったら、そこから浮かんだ登場人物や感情、出来事、小道具などを言葉にして、次々と箱の中に放り込んでいきます。
 この箱が「ボックス」です。

  『猫の手も貸したい 及川眠子流作詞術』リットーミュージック刊 9ページより

これ、我田引水じゃないんですけど、よく分かります。

私は作詞はしませんが、仕事でキャッチコピーを書いたり、
「お客様導入事例」の原稿を書いたりする時は、いつも
脳裏に、明確な映像を流しています。
静止画ではなく、動画です。

その映像の中の出来事を、いかに具体的に、分かりやすく
伝えるか、という作業をしています。

だから、「作詞をされる方も、同じような過程を
経るんだな」と分かって、スッキリしました。

ただし「お客様導入事例」のような長文の中で使う言葉と
「歌詞」を紡ぐ言葉とでは、“すき間” が全然違います。

歌詞は、言葉数が少なくて、ゆるく積み重ねた感じ。
そのすき間を、音楽が埋めていくんです。

たとえば、井上陽水の楽曲は、大抵の場合、
歌詞カードを読んでも意味不明なのに、
曲に乗せて歌いだすと、さっきまでは分からなかった
“情感” が、わっーと浮かび上がってくるんですよね。

いつも、「不思議だなぁ」と思いながら聴いてます。

残念ながら私には、音楽を作る才能がないので、
「作詞って、どうすればいいんだろう」と
不思議だったのですが、『猫の手も貸したい』を
読んだら自分でも作詞できそうな気がしてきました。

誰か、曲を書いてくれないかしら。

と、少し話がそれましたがこの本はおススメです。

作詞に悩んでいるソングライター志望から、
小説や文章を書きたいと思っている人、
そして、
『残酷な天使のテーゼ』と『魂のルフラン』などの
詩の秘密を知りたいというファンの方々まで、
幅広いニーズに、ぴったりフィットすると思います。

おススメです。

今日も新しい気づきに感謝です。