今回のタイトルは、
「聞く」と「話す」はコインの裏表。

少々分かりにくいかもしれませんが、
人の話を聞くこと、と
自分の話を聞いてもらうこと、は2つで1つ。
切っても切り離せない関係にあります。

どちらかが欠けても、コミュニケーションは
成立しません。

以前も書きましたが、
「聞く力」とは、ただ黙って相手の話を聴くだけの、
受け身の力とは違うんです。

「傾聴」に対する誤解を解く

私が「聞く力」と言い始めた時に、いろんな方から
「聴く」の方じゃなくていいんですか?
と訊ねられました。

いいんです。

“自然と耳に入っていること” を「聞く」と書き、
“積極的に耳を傾けること” を「聴く」と書く。

という説明をたまに目にしますが、そんな厳密な
区分もないのが、ホントの話です。

ただし、「聴く」の方が “耳を傾ける” という
ニュアンスが強いことは確かです。

ちなみに質問と同義の「きく」は「訊く」と書きます。

実際、私のワークショップでも「傾聴」という
言葉は重要なキーになっています。

では、なぜ「聴く力」ではなく「聞く力」と
表記したのか?

それは、“単なる受け身の行為” と受け取られたくは
なかったからです。

一度、某イベントで知り合った女子大生に
「聞く力のセミナーをやってるんだよ」と説明したら
「私は、話す力の方を知りたい…」と言われました。

とっても大人しく、静かな声で話す、控えめな子でした。

お酒の入った懇親会の半ばでしたので、あまり詳しくは
話せませんでしたが、彼女は多分、
「聞く力」という言葉から、

いつものように、黙って静かに人の話を聴く

という行為を連想したのだと思います。

確かにそれでは面白くありません。
でもそうじゃないんです。
私が大事だと思う「聞く力」は一方通行ではないんです。

先日も、お客様先にインタビュー取材に伺いましたが、
まー楽しかったですよ。
ビジネスの真面目な話しかしていないのに、
部屋にいる全員が大笑いする場面が、何度もありました。

それは、何もギャグを言ったわけでもなんでもないんです。

相手の話に耳を傾けて、
受け取った言葉を、的確に返していくと、
話しているお客様の緊張もほぐれていきます。

「あ、ちゃんと聞いてくれている」あるいは
「こちらの話が、きちんと通じている」という安心感です。

そして、話を聞いているこちらも、
質問した内容が、お客様の「話したいこと」と、
ズレていないことが分かると安心します。

人の抱える緊張感や、安堵感って、うつりますよね?

これから対話しようとする、初対面の人が緊張していると、
自分の緊張が、さらに高まりません?

お互いに
 「今日は何を聞かれるんだろう?」
 「今日は、どこまで聞けばいいんだろう?」
と緊張していると、部屋の空気はピーンと張りつめます。

この緊張を解くには、
ゆっくりと、しかし、丁寧に、
言葉のキャッチボールを重ねることが大事なんです。

相手のボール(話)を受け取ったら、
ボール(質問)を返してあげなければ、
コミュニケーションは進まないのです。

ただし、ここで重要なことは、
良い所に、良い球を返すこと、です。

これもキャッチボールと同じです。

相手が気持ちよくキャッチできるいいボール(質問)
を投げるためには、相手のボール(話)、
相手のフォーム(仕草)に目を凝らして、
どんなボールを投げたらいいかを考える必要があります。

そうなんです。
耳を傾け、目を凝らすんです。

傾聴とは、聴くだけではなく
相手の様子をきちんと観察することも含んでいます。

目の前にいる相手に、
興味と、敬意と、好意を持って、
真っ直ぐに、しっかりと見つめて、
ジッと耳を傾け、
頭をフル回転させることなんです。

それが、「傾聴する」ということなんです。

ただじっと、相手の話を耐えることではありません。

「良い共感」「悪い共感」

と、今年の4月に聴講した、
ジョアン・ハリファックス博士による
「マインドフルネスとコンパッション」という講演
のメモを整理していたら、下記のような言葉を
書き留めていました。

自分と相手を区別する。
 → 客観的に相手を見て共感する微妙なバランス。
誤った共感は毒!

自分自身の中に起こっていることを感じる能力は、相手の中で何が起きているかを感じることに通じる。

これ、まさに、「聞く力」で言いたいことと
重なる話なんです。

これとっても重要です。

これまで、繰り返し書いてきましたが
「人は皆、違う存在」なんです。

これまでの人生で経験してきた事柄も、
考え方も、感じ方も、目に見えている世界も
すべてが、同じではないんです。

だから、コミュニケーションしなければ
分かり合えないんです。

安易に、「人と自分を同化して考える」のは
害にしかなりません。

感動ポルノも、根っこは同じです。

……と、少々長くなってきましたので、
続きはまた次回!

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

また次回、お付き合いいただけますと幸いです。

 

今日も新しい気づきに感謝です。