『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』北米版Blu-rayパッケージ表面

ビルボード誌のセルビデオチャートで1位獲得の快挙を達成!

西暦2029年 ― 企業のネットが星を被い、
電子や光が駆け巡っても、
国家や民族が消えてなくなるほど
情報化されていない近未来

オープニングに映し出されるこのメッセージを読むだけで、今も心躍ります。設定が全然古びていないのが素晴らしいです。

1995年に公開され、その後アメリカでもVHS(!)が発売されると、ビルボード誌のセルビデオチャートで1位を獲得したことが、当時大きな話題になった作品です。私は、そのニュースを当時放送されていた深夜番組『11PM』(日テレ系)で見たのを覚えています。その日の司会は、作曲家の三枝成彰氏でした。

日本のアニメ映画がアメリカでヒットしたという事実に、ちょっと感動したことを今でも覚えています。

しかも、『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』は、その後のハリウッド映画に大きな影響を与えています。
その代表格が『マトリックス』三部作(1999年、2003年)です。

人間が機械に搾取され、機械がプログラムした夢の中で「自分の人生を生きているつもり」でいる設定には、『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の影響が色濃くにじんでいます。

さらに、監督のウォシャウスキー姉妹(当時は、「兄弟」。2012年に性別適合手術を受けて、今は「姉妹」に)は、日本のマンガやアニメ特有の、パースを無視した構図を実写で再現するために、カメラの動きに合わせてセットをバラバラに動かしたり、いろんな工夫を行っています。

さらに、銃弾でビルの柱が削られる描写は、『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』そのもの。

加えて、彼女たちの大好きな香港カンフー映画の、ワイヤーアクションがふんだんに取り入れられており、『マトリックス』は、日本のアニメと香港カンフーが、ハリウッドに養子入りしたようなものです。

さらに今年、スカーレット・ヨハンソンを主演に迎え、ビートたけし、桃井かおりも出演したハリウッド リメイク版『ゴースト・イン・ザ・シェル』まで公開されるなど、作品の人気と影響力は今なお衰えていません。

近年、経産省が音頭を取って、盛んに “Cool Japan” を謳い、日本のマンガやアニメを先頭に立てて海外に “日本文化” を売り込もうとする動きがありますが、そうした発想の源流をたどると、この作品の成功が、大きな影響を与えていることは間違いないでしょう。

「肉体」を無視して、「概念」だけで話を進められる日本人

『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』を見ていて、私たち日本人には何の違和感もないんですが、『マトリックス』や『ゴースト・イン・ザ・シェル』を見ていると、欧米の人たちにはやっぱり違和感があるんだろうな……というのが、主人公である草薙素子たちが、自分の肉体=実存を持たないことに、特に抵抗していない……ということです。

素子は、全身が人工物=「義体」のサイボーグであり、脳も「電脳化」されており、ケーブルを差してほかのメンバーと交信します。

1人、電脳化を拒んでいるトグサ刑事を除いて、みんな、自分が義体であることを普通に受け入れています。

素子が苦悩を見せるのは、自分の魂 = GHOST が本当に存在しているのかどうか、ということです。

つまり、実存は無視して、精神=概念だけを追い求めているのです。

これって、すごい日本的。
武士道における「切腹」とか、太平洋戦争における「玉砕」とか、肉体的な生死よりも、概念的な死生観を優先させる “理不尽” に通じる思考が息づいています。

一方、『マトリックス』の主人公たちは、プログラムの世界を抜け出して、自分の肉体=実存を取り戻して、自分自身に戻ってから、機械と、プログラムの世界で対等に戦うために自らの精神を鍛えるフェーズに入ります。

決して、肉体を無視しません。

『ゴースト・イン・ザ・シェル』でも、「義体化されてしまっている」ことが、主人公たちのアイデンティティーを揺るがす一番の問題になっています。この点で、押井守監督が描いたオリジナルと大きく異なっています。

肉体を重視しないこの感覚は、日本特有なのではないでしょうか。

押井守監督は、続編となる『イノセンス』で、さらに概念だけの世界にのめり込み、あろうことか、捕らえられていた子どもたちを助けにいったはずのバトーが、人間の子どもたちよりも、その子どもの命を危険にさらす方法でその精神を違法にコピーして動かしていた人形の方を大切に思い、ようやく助けられて泣いている子どもに「人形のことは考えなかったのか!」と怒りをぶつけるという訳のわからないシーンを堂々と描いて、私たち観客に、その狂気の片りんを見せつけています。劇場で観た時は、あまりの異常さに「空耳かな?」と疑ったほどです。

原作は、士郎正宗氏の同名マンガ。しかしこの映画は……

と、『イノセンス』のことは横に置くとして……

『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』と『ゴースト・イン・ザ・シェル』のレビューなどで必ず目にするのが、「原作の方が好き」「映画の方が好き」というファンの主張です。

この映画の原作は、人気漫画家・士郎正宗氏の手による『攻殻機動隊』です。

しかし、『GHOST~』と、内容はかなり異なります。

いっつもいっつも、原作のマンガを好き勝手にいじってしまい、それで結局、高評価を得てきた押井守監督。
この作品も大成功しているので、まぁ、私たち観客としては問題ないのですが、原作および原作者のファンにとっては、しこりが残らざる得ないわけです。

なので、シリーズというか新しい派生作品が発表されるたびに、前述の「主張」が激しく交わされるわけです。

私としては、どちらも好きなので、本投稿のタイトルで、あえて「押井守監督の代表作(の、ひとつ)」と書いた次第です。

北米版は、エンディングの楽曲が異なるので注意

私は、DVDからBlu-rayに、少しでも安く買い替えようと思って、北米版を購入したんですが、エンディングの曲が違うんですよね、日本オリジナル版と。
なので、バンダイビジュアルから発売されているDVDの方も、捨てずにとってあります。

画質は、Blu-rayの方が優れてはいますが、特にデジタル修復されているわけでもないので、その差は僅差です。

セリフを暗記しそうなほど繰り返し鑑賞している作品なので、「これを英語吹き替え(Dolby 5.1 DTS-HD)で見続けたら、英語の勉強にもなるんじゃないか?」というスケベ心もあったのですが、英訳されたセリフが長ったらしくて、キャストがほぼみんな早口。しかも、演技が下手……。なので、結局オリジナルの日本語音声(Dolby Digital 2.0)で鑑賞しています。残念……。

ジャケットもペラペラだし、デザインも、国内版の方がかっこいいと思いますので、少し高くても国内版Blu-rayを購入することをお勧めします。

    

『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』北米版Blu-rayパッケージ裏面

【作品メモ】
超高度ネットワーク社会の中で、より高度・凶悪化していく犯罪に対抗するために政府は、隊長・草薙素子少佐を始めとする精鋭サイボーグによる非公認の超法規特殊部隊を結成。公安9課「攻殻機動隊」の誕生である。
ある日某国情報筋から攻殻機動隊に警告が発せられる。EC圏を中心に出没し、株価操作・情報操作・政治工作・テロなどで国際手配中の“通称:人形使い”が日本に現れるという。素子は犯罪の中に見え隠れする“人形使い”の影を追う。
 (Amazon 商品説明より)

【監督・絵コンテ】押井守
【原作】士郎正宗
【音楽】川井憲次
【キャスト】草薙素子/田中敦子:バトー/大塚明夫:トグサ/山寺宏一:イシカワ/中野裕:荒巻/大木民夫:中村部長/玄田哲章:人形使い/家弓家正 他

本編:123分