『ソナチネ』Blu-rayパッケージ表面

大好きな北野映画の中で「どれが一番か?」
と聞かれた時に、迷いながらも「これ!」と
挙げることが多いのが、この映画です。

『ソナチネ』(1993年)。

北野武、4本目の監督作品にして、
北野映画前期の集大成のような作品です。

据え置いたカメラが捉える画面には、
沖縄の美しい砂浜と海と青空が
静かで美しく、広がります。

しかし、その中で繰り広げられる物語は、
「凶暴さ」で貫かれています。
この「凶暴さ」が笑いとつながっていて、
要所要所で笑わせてくれるのも、北野映
画ならではの味わいです。

チャンバラトリオの南方英二師匠演じる
殺し屋の存在感が秀逸ですし、
砂浜での「紙相撲ごっこ」も、観るものに
強烈な印象を残します。

そして今は、大杉連が見出された映画
としても有名です。

セリフ1つだけのエキストラだったはず
の大杉連が監督の目に留まり、出番が増
えて、その後、北野映画の常連となる、
そのきっかけが、この映画でした。

バイク事故前の北野武の集大成

この映画が創られた1993年は、監督が、
バイク事故(1994年8月2日)を起こす前。

静謐な画面一杯に、何だか圧倒的な
「苛立ち」のようなものを感じるのも、
気のせいではないのかもしれません。

2009年11月に開催された国際映画祭「第
10回東京フィルメックス」の記念シンポ
ジウムで、北野監督が「自分の最後の作
品にしようと」思っていたことが記録さ
れています。

北野にとって一番思い入れの深い作品は『ソナチネ』だという。「自分の最後の作品にしようと思って、好きなもん撮ってやろうって作った作品。沖縄にロケに行って、画もきれいにできたと思ったんだけど、評判悪くてね。早々に打ち切りになっちゃった」と映画づくりの難しさを語りつつ、「おれはせっかちで、作品の中にいろんなものを詰め込んじゃうタイプ。そのネタあかしをしないから、観た人にはわかってもらえないことが多い。でもバカは観なくていいと思ってるから」とお約束の毒舌も忘れなかった。

シネマトゥデイ 「北野武、嫌いな役者、二度と使わない役者を監督としてホンネで明かす」
2009年11月24日 8時00分 より抜粋引用

上記コメントにある「評判が悪くてね」
というのは、日本での観客動員数の話。

欧州が見出した、“世界の北野”

私は、全作品劇場に足を運んでいますが、
日本国内で北野映画に客が入りだしたの
は、『HANA-BI』(1997年)が、ヴェネ
チア国際映画賞で金獅子賞を獲得してか
らのこと。

日本の観客は、基本的にミーハーです。

淀川長治先生が亡くなられて以降、
まともな映画評論家もほとんどいません。
映画ライターの大半は、たんなるちょうち
ん持ち程度。

まぁ、実際のところ、雑誌社から試写会
の券をもらって映画を観て、記事を書く
ライターさんたちの場合、個人のブログ
であっても、あまり辛口な本音を書くと、
映画会社から編集部に
「あの人はちょっと…」
という連絡が来たりしてましたからねぇ。
(20年ぐらい前に、目の前で見た実話)

これも、日本の残念な実態です。

上記の引用記事内で、北野監督は「バカ
は観なくていいと思ってる」と述べてい
ますが、これは冗談めかしてはいるもの
の、偽りない本音だと思います。

それはさておき、当時から
『ソナチネ』の世界での評価は
高いものがあります

イタリアのタオルミーナ国際映画祭でグラ
ンプリとなるカリッディ金賞を受賞。
第46回カンヌ国際映画祭「ある視点」
部門に出品され、第34回 ロンドン映画
祭でも招待作品として上映。
フランスのコニャック国際映画祭でも批評
家賞を受賞するなど、ヨーロッパにおける
北野映画人気を確立していきます。

さらに1995年にBBCが発表した
「21世紀に残したい映画100本」の中に
溝口健二の『西鶴一代女』
小津安二郎の『東京物語』
黒澤明の『椿三十郎』、『乱』
という、錚々たる傑作と並んで
『ソナチネ』がランクイン
しています。

今、“世界の北野”というフレーズを日本
のマスコミもよく使いますが、北野映画の
魅力を見出したのは、ヨーロッパの方が
先であったわけです。

暴力を、“かっこよく見せない”バイオレンス

『ソナチネ』は、暴力に彩られたヤクザ
映画です。

その暴力描写が突発的であるゆえに「痛さ」
と「怖さ」を感じさせるのは、すべての
北野映画に共通する点です。

北野映画は、暴力にカタルシスを感じさせ
ることを拒否しています。

これはとても重要です。

暴力への憧れなどは、抱かせないように
なっています。

それは、監督が暴力の怖さを描いているか
ら。かっこいいヤクザを描いているのでは
なくて、破滅していく狂気を描いているか
らです。

まだ未見の方々は、ぜひ一度ご覧ください。

美しい沖縄の風景に包まれて、
バカみたいな日常を送る男たちが
強烈に脳裏に焼き付くと思います。

おススメです。

  

【作品メモ】
1993年、日本。
広域暴力団・北島組の友好組織・中松組が、沖縄の阿南組と抗争になった。そこで北島組組長の北島とその幹部の高橋は、北島組傘下の村川組組長の村川に、「中松組から助けをもとめられたから若衆連れて手を貸しに行け」と命令する。過去に北海道の抗争で若衆を3人失っている村川は乗り気で無いものの、「行くだけ行ったら後は手打ちで終わると思う」という北島組長の言葉を信用し、手下を連れて沖縄へ向かう。(Wikipediaより、あらすじを抜粋引用)

【監督・脚本・編集】北野 武
【制作】奥山和由
【音楽】 久石譲
【撮影】柳島克己
【キャスト】村川/北野武:幸/国舞亜矢:上地/渡辺哲:良二/勝村政信:ケン/寺島進:片桐/大杉漣:殺し屋/南方英二 ほか

本編:93分


インタビュー歴20年以上のプロが、リラックスした雰囲気の中で徹底ヒアリング。動画撮影も優しくリードしますので、カメラなれしていない方でも自然な形で、楽しそうにお話いただけます。
■笑談快縁(株式会社プラップル)
https://www.plapple.jp/top/personalbranding

■笑談快縁 無料相談会(Peatixへリンク)
https://peatix.com/group/6943917

■株式会社プラップル コミュニケーション&発信力講座 (ストアカへリンク)
https://www.street-academy.com/steachers/161096?conversion_name=direct_message&tracking_code=e7f5655a68cb4fa90e6dc7f863fe0e49