『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』

前回『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還』の稿で触れましたが、
私たちスター・ウォーズ ファンは、ルークたちの物語が完結した後、
“ダース・ベイダーが誕生するまでの物語” を、16年間待っていた

わけです。

今、さらっと書きましたが、

何の物語なのか、は知っているのに、
16年間も待たされたわけです。

エピソード2で始まるクローン戦争や、
エピソード3で描かれる、アナキンとオビ=ワンの火山での決闘など、
ところどころ、スター・ウォーズ神話における「過去の出来事」を、
ファンは知っているわけです。

しかし、何年経っても、肝心の映画が作られる気配がない……。

これは結構つらいですよ。

だから、みんな薄っすらとでも、妄想するわけです。

そんな月日を積み重ねた果てに、ようやく制作されたのが、
この作品
『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999年)。

この映画の製作が発表された時は、本当にうれしかったです!

同時に、ものすごい不安でもありました。

だって、

スター・ウォーズ神話 全9エピソードのうち、
もっとも盛り上がりの大きいとルーカス本人が考えて、
最初に映画化したルーク・スカイウォーカー3部作を見た後で、
父親であるダース・ベイダー誕生までの物語を描くっていっても……

ストーリーが地味になりそうだし、
そもそも、結末分かってるし……。

16年間かけて、新しいスター・ウォーズ神話への期待を膨らませて
きた、世界中のファンが満足できる映画を作るなんて……

そんなの、誰にも出来ないでしょ?

ハードル高すぎますから。

絶対、どんな脚本書いて、どんなキャラクターを登場させても
誰かが文句を言うんです。
数多くのファンが、愚痴をこぼすんです。

そんな苦行に、我らがジョージ・ルーカスが挑むわけです。

心配でしたねぇ。

ルーカス御大とはまったく接点のない、東洋の子ども(私)が
心配することじゃあないんですが、これがファン心理ってものです。

予告編を見るだけで大騒ぎ

と、この映画が製作されていた頃は、ダイアルアップして
インターネットにつなぐのが普通な時代。

モデムの速度は 56Kbps。

今のネット環境と比べたら、恐ろしく遅いです。

動画をストリーミング再生するなんて、不可能でした。

そんな時代に、ルーカスフィルムでは。ファンサービスとして
「ファントム・メナスの予告編」を、インターネットで公開
してくれたのです。

私もドキドキしながら、動画のダウンロードにチャレンジしました
が、結局、見ることが出来ませんでした。

丸一日ぐらい、ダウンロードを試みたのですが、
結局、途中でエラーが起きてしまい、再生不能でした。

とても残念がっていたら、日本の映画配給会社のプロモーションで、
特定の映画の広告に、
「スター・ウォーズ エピソード1の予告編を上映します」という
宣伝文が!

これはもう、観るしかない!

というわけで、まったく観る予定のなかった
『Xファイル ザ・ムービー』を観に行きました。

そこで目にした予告編。

あの衝撃。たしか、↓こんなキャッチコピーでした。

すべての伝説にはじまりがある

ストーリーを紹介するような映像はなく、
美しく、思わせぶりなビジュアルに、
上記のキャッチコピー。

……これを見た時に、ハッとしました。

「ああ、思えばスター・ウォーズも、何もないところから
始まったんだよなぁ。自分も今は何にもないけど、これから
何かを始めて、何とかなることも、不可能じゃない」

そう、思い至ったんです。

この時、私は確かアルバイトしたりして、
生活してましたからね。

とても勇気をもらいました。

後に、日本IBMのデザイン部門でコピーライティングを
行うようになるのが、2001年のことで、
1999年当時は、まだまだ底辺にいましたから。

ああいう励ましは、重要です。

あのコピー、あの予告編は、いい思い出になっています。

先行オールナイトを観終わって…。割り切れなかった、あの想い

そして迎えた公開日。

もちろん、先行オールナイトで観に行きました。
行列しましたよー、新宿プラザで。

↓下の写真は、当時購入した劇場パンフレット。

『SWep1/ファントム・メナス』公開時パンフレット

「STAR WARS」のロゴが浮かび上がるけどインパクトのない
ホログラムを中心としたパンフレットの仕上がりに
ちょっと嫌な予感もしましたが、
スター・ウォーズのイメージを尊重したこのデザインには
安心感も。

『ファントム・メナス』公開時のパンフレット中面

こういう記事を読みながら、気分を昂らせたり、
落ち着かせたり。

劇場内には、ライトセーバーを持ったファンばかり。

仮装した人も、あちこちにいました。

お祭りです。

16年振りの、スター・ウォーズの完全新作ですから
盛り上がるのは当たり前。

そして、上映の時……

劇場の電気が消えると、「ウォー」っと歓声があがり、
真っ暗だったスクリーンに、

A long time ago
in a gyalaxy
far, far away…

というお馴染みのテキストが映し出され、
「パァッ!」っと、スター・ウォーズのテーマの
1音目が鳴り響くと、もう、全身に鳥肌が!!!

あの気持ち良さは、前代未聞、というか
後にも先にも、あの日が最高でした。

そしてようやく本編の話になるのですが、
最初に観終わったときは複雑でしたね。

「え、処女懐胎って、そんな乱暴な……」
「え、ミディクロリアンって何?…」
「え、ダース・モールはこれで終わり……」
「え、ここで終わり?」

でも、つまらないわけじゃないんですよ。

個人的には、ビジュアルも好きだし、
中盤のクライマックスとなるポッド・レースに
最後の戦闘シーンなど、盛り上がりも十分。

ダース・モールの存在感も素晴らしかったです。

映画館で2回ほど鑑賞した後は、VHSを購入し、
DVDが出たら買い替え、
Blu-rayになっても買い替えてきました。

何と言っても、正統なスター・ウォーズ・サーガの
これが、始まりのエピソードなんですから。

……

けれど、

それでも、

初回鑑賞後の気持ちは、
何と言っていいか分からない状態でした。

世界中でも、結構叩かれていました。

叩かれる要因は、大きく2つ。

1つは、
アナキン・スカイウォーカーの母親が主張した
「処女懐胎」。

敬虔なカソリック信者でも、今どき信じている人は
皆無ですよ、マリア様の処女懐胎なんて。

それを、アナキンの出征の秘密として
脚本に盛り込んだ強引さ。

処女懐胎の根拠となるのが「ミディクロリアン」という
新たな設定なのですが、宇宙に満ちるこの物質こそが
フォースの根源であり、アナキンは、その数値が異常に
高い。

だから、アナキンは「ミディクロリアンの申し子」だと。

フォースにバランスをもたらす、預言の子であると。

この設定が、なーんか消化不良なんですよね。

そして、バッシングされたもう1つの大きな理由。
それが、黒人差別の分かりやすい暗喩
です。

グンガン族というニュー・キャラクターが、
惑星ナブーの水中に独自の文明を築いて生活いるのですが
アミダラ女王が統率する地上国家との断裂ぶりや、
独特のなまり、高度な文明を持ちながら無教養を感じさせる
振る舞いなど、まさに……なんですよ。

こういう場合、現実社会の差別の暗喩として、
隔絶された社会をつなぐ役割を担う突出した
キャラクターっていうのが必須になるんですが、
この役を担うジャー・ジャー・ビンクスという
キャラクターが、とにかく不評。

普通なら、こういう “橋渡し役” には、
知性と勇気、包容力と行動力が感じられるキャラが
適任なのですが、ジャー・ジャーというキャラは、
人はいいけど、無知・無教養で、鈍重で……。

くだけた言い方をすれば、ドジでグズでまぬけなんです。

かつて、ハリウッドが白人だらけだったアメリカにおいて
テレビや映画のドラマで、黒人の定位置だった、
学がなく、字も読めず、間抜けな存在と同じ描かれ方。

どうせ大した考えがないなら白人たちの指示に従えばいい
……という道化な役を想起させるキャラだったわけです。

ざわつきますよね、アメリカの知識層などは特に。

ただ、ルーカス御大はグンガンを「黒人」の暗喩として
描いたつもりは毛頭ないわけで、私たちとしてもそれを
受け入れるしかないわけです。

まぁしかし、
「処女懐胎」で敬虔なクリスチャンの神経を逆なで、
「グンガン」で黒人差別を匂わせたのは、失策ですね。

普通なら、出資した映画会社内で脚本段階からチェック
されるのでしょうが、そこはそれ。

このエピソード1に始まるスター・ウォーズ 新3部作の
スゴイところは、すべて「ジョージ・ルーカスのお金」で
作られているということ。

ルーカスがお金を出して、ルーカス・フィルムで製作
しているんですから、本人のやりたいようにできるわけ
です。すごいですよね。

世界最大のプライベート・フィルムなんです。

世界中で物議をかもした脚本にも、ストップをかける人は
いなかったのです。

でもねぇ……そんなに出来の悪い作品じゃないんですよ。

むしろ良く出来てます。

この間、マーベルの『ブラックパンサー』を観たんですが、
あの映画で描かれた超文明国ワカンダのビジュアルなんて、
グンガンたちの暮らす惑星ナブーそっくりなんですよ。

原作コミックを読んでいないので、どちらが先かは
分かりませんが、しかし、惑星ナブーのビジュアルが
『ブラックパンサー』にも影響を与えていることは
確かでしょうね。

と、随分長くなってしまいましたが、まだ
話したいことの半分にも届いておりません。

これからスター・ウォーズを観る方へ

最後に一つだけ書かせてください。

これからスター・ウォーズを初めて観る、という方は
まず、エピソード4から6までの3作、
「新たな希望」
「帝国の逆襲」
「ジェダイの帰還」
を順番に見た後で、そこからエピソード1を観るように
してください。
それがお勧めです。

あと、今ディズニーで制作されている
「フォースの覚醒」以降のスター・ウォーズは、
正統なスター・ウォーズ・サーガには含まれません。

ジョージ・ルーカスが構想していた
スター・ウォーズ全9エピソードとは、
まるで中身が違うのです。

あれは、スター・ウォーズの皮をかぶった
ディズニーの「ビジネス商品」です。

エピソード1~6までが、『スター・ウォーズ』正史
なのです。

あしからず。

  

【作品メモ】
1999年、アメリカ。映画の撮影に、デジタルカメラを導入した先駆け的作品。ドルビーサラウンドEXを初めて採用した映画でもある。
惑星ナブーのクイーン・アミダラ(ナタリー・ポートマン)を救出後、惑星タトゥイーンに不時着したジェダイのパダワン、オビ=ワン・ケノービ(ユアン・マクレガー)とジェダイ・マスターのクワイ=ガン・ジン(リーアム・ニーソン)は奴隷の少年アナキン・スカイウォーカーと出会う。“フォース”の力に恵まれたアナキンは自由を手に入れジェダイの騎士となるべく彼らと共に故郷を発つ。ナブーに帰還したアミダラとアナキンたちは大規模な侵略に直面する一方、クワイ=ガン・ジンたちは強力な敵ダース・モールと死闘を繰り広げる。ほどなくして彼らはこの侵略が闇の力を誇るシスの邪悪な計画の一部であることに気づく。(Amazon 商品説明より、あらすじを引用)

【監督・脚本・製作総指揮】ジョージ・ルーカス
【製作】リック・マッカラム
【撮影】デヴィッド・タッターサル
【編集】ポール・マーティン・スミス:ベン・バート
【音楽】ジョン・ウィリアムズ
【キャスト】クワイ=ガン・ジン/リーアム・ニーソン:オビ=ワン・ケノービ/ユアン・マクレガー:クィーン・アミダラ(パドメ)/ナタリー・ポートマン:アナキン・スカイウォーカー/ジェイク・ロイド:パルパティーン議員/イアン・マクダーミド:シミ・スカイウォーカー/ペルニラ・アウグスト:パナカ隊長/ヒュー・クオーシー:ジャー・ジャー・ビンクス/アーメド・ベスト:C-3PO/アンソニー・ダニエルズ:R2-D2/ケニー・ベイカー:ヨーダ/フランク・オズ ほか

本編:133分(劇場公開時オリジナル)、137分(2001年以降版)


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