『七人の侍』北米版Blu-rayパッケージ表面

映画に詳しくない人でも、
「タイトルは聞いたことがある」
「内容も、何となく知っている」
「似たような作品を観たことがある」
というほどの名作・傑作は、そう多くありません。

黒澤明監督の『七人の侍』は、そうした一本です。

この映画の内容を、一言で表すと

“農民が7人の浪人を雇って、野武士集団に対抗する”

というものです。

『七人の侍』中づり広告

この “弱者が、強者を雇って身を守る”という
モチーフは、マンガやドラマなどで、幾度も
繰り返されていますが、

そもそも、“農民が、浪人を雇う” なんて着想は
この、『七人の侍』がオリジナル!

それも、荒唐無稽な思い付きではなく、
過去の歴史に似たような事例がないかどうか、
膨大な文献を読んだ上で、
「こうしたことも、あり得た」という
確証の元に、脚本執筆が進められたと、
以前、どこかで読んだ記憶があります。

その本は忘れてしまいましたが、『七人の侍』が
いかに、実際の歴史を重んじていたかは、
下記の引用文からもうかがえます。

 連合国占領下でのチャンバラ禁止で逼塞を余儀なくされていた時代劇は、昭和二十五年の講話成立以後、増加の一途をたどっていた。しかし、『七人の侍』は、歌舞伎の様式に影響されて出来上がった従来の時代劇とはかけ離れた、新しいリアルな時代劇だった。戦国時代の人々の生活の実態――髪型、着物、食物、食器、農具から住んでいる家の構造、村の地理、周囲の地勢まで、調べられるだけ調べて、事実に基づき機能に即して綿密に再現を図った。(中略)戦術戦略は詳細を極めている。

  ―― 映画評論家 河原畑 寧 氏(東宝から過去に発売されたDVD BOX 「AKIRA KUROASAWA MASTER WORKS 1」に同封されていたブックレットより抜粋引用)

この名作に感銘を受けた名優ユル・ブリンナーが
制作者として企画したハリウッド映画『荒野の7人』
は、シリーズが4作続くほどの大ヒットを記録。

『荒野の7人』は、『七人の侍』の西部劇リメイク
と言われますが、別の見方をすると、
『七人の侍』は、西部劇の手法を大いに参考にした
時代劇であり、『荒野の7人』は、その根本を
上手に組み取った幸せなリメイク作品であると
言えるでしょう。

完全無欠の約3時間30分

黒澤明監督の『七人の侍』は、約3時間30分もの
超大作です。

しかし、観ていて飽きることはないでしょう。
とにかくサービス精神が詰まっています。

古い日本映画だと思って、見くびってはいけません。
この映画の迫力、面白さ、展開の濃さを超える映画は
現在に至っても少ないのです。

未だに、映画史上最高傑作と呼ばれるのは、
年寄りの懐古趣味ではなく、厳然たる事実なのです。

黒澤明監督は、次のように言っています。

日本映画は要するにお茶漬けサラサラでしょう。もっとたっぷりご馳走を食べさせて、お客にこれで堪能したと言わせるような写真を作ろう。
これがこの仕事のはじまりですね。

  ―― 黒澤 明氏(東宝から過去に発売されたDVD BOX 「AKIRA KUROASAWA MASTER WORKS 3」に同封されていたブックレットより抜粋引用)

7人の浪人が集まるまでの前半には、
浪人それぞれのドラマがあり、
胸をすくようなアクションがあり、
息をのむような決闘までちりばめられています。

この前半部分にちりばめられた数々の発想もまた
現在まで、マンガや映画など数えきれないほどの
創作作品に引用されています。

少なくとも、「侍が登場するマンガを描きたい」と
思っているような人で、この映画を見ていないと
すれば、それは不勉強の極みというほかありません。

キャラクターも個性が際立っています。

リーダーとして7人を束ねる「勘兵衛」
参謀役として勘兵衛を支える「五郎兵衛」
勘兵衛と戦場を共にした「七郎次」
若く、幼く、勘兵衛に心酔する「勝四郎」
ムードメーカーとなる「平八」
居合の達人で、無口な「久蔵」
そして、武士に憧れる百姓出身の「菊千代」

勘兵衛の人柄と、機知に富んだ行動力。

塚原卜伝の逸話を基にした五郎兵衛の登場シーン。

息をのむような、久蔵の居合。

野獣のように粗暴だが、心の根の優しい菊千代。

心がグイグイと引っ張られます。

そして後半は、野武士集団との対決。

クライマックスとなる雨中の大合戦は、とにかく
迫力満点。

当時のモノクロのカメラには、
雨が写りにくかったため、
水に墨を混ぜて、黒い雨を降らせたといいます。

当時画期的なマルチ・カメラ・システムによって
切り取られた、迫力満点の斬り合い。

この時、使用されたカメラは3台とのことですが
何度観ても、惚れ惚れします。

作家の井上ひさし氏は、次のように書いています。

 この映画に「世界映画史上、空前絶後の大傑作」という形容句を捧げても決して褒めすぎにならないことは現在では常識のようなものだから別の誉め言葉が必要だろうと考えて、たった今、「映画という表現形式は、じつは黒澤明にこの作品を作り出させるために考え出されたものにほかならない」という一行を捻り出したところだ。ほんとうにこれぐらい褒めないと褒めたことにならないぐらい、凄くて、深くて、おもしろい作品であることは、ご覧になれば(あるいはご覧になった今では)、賢明な諸兄姉にはおわかりいただけるはずである。

  ―― 井上ひさし氏(東宝から過去に発売されたDVD BOX 「AKIRA KUROASAWA MASTER WORKS 3」に同封されていたブックレットより抜粋引用)

これほどの誉め言葉が、まったく大袈裟に
感じられない大傑作。
おススメです。

   

【作品メモ】
1954年、日本。1954年度ヴェネチア国際映画祭 銀獅子賞。第5回 ブルー・リボン賞 第3位。1954年度「キネマ旬報」ベスト・テン第3位。

【監督】黒澤明
【脚本】橋本忍:小国英雄:黒澤明
【製作】 本木莊二郎
【撮影】中井朝一
【音楽】 早坂文雄
【美術】松山崇
【美術助手】村木与四郎
【キャスト】菊千代/三船敏郎:勘兵衛/志村僑:志乃/津島恵子:志乃の父・万造/藤原釜足:七郎次/加東大介:勝四郎/木村功:平八/千秋実:久蔵/宮口精二:五郎兵衛/稲葉義男:茂助/小杉義男:与平/左卜全 ほか

本編:207分


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『七人の侍』北米版Blu-rayパッケージ裏面