『椿三十郎』北米Criterion版Blu-rayパッケージ表面

黒澤明の大傑作時代活劇『用心棒』の続編となるのが、この『椿三十郎』です。

“三十郎” を名乗る素浪人(三船敏郎)と、
腕にも策謀にも自信がある野心家の室戸半兵衛(仲代達矢)が
刀の柄に手をかけて対峙している。

三十郎を慕う若侍たちが固唾を飲んで見守る中、遂に二人が動く。
一閃、目にも止まらぬ速さで白刃がきらめく。
勝ったのは、どちらか?
一瞬の後、室戸の胸から勢いよく血が噴き出し、ゆっくりと前に倒れる…。

世界の映画史に刻まれた、有名な居合による決闘のシーン。

このシーンなくして、『椿三十郎』は語れません。
とにかく、この緊張感、この迫力、このカタルシスを味わいたくて
何度、この作品を鑑賞してきたことか。
そしてまた、何度観返しても飽きないほど素晴らしい!

このシーンの元となった脚本には、たった2行記されていただけでした。

これからの二人の決闘は、とても筆では書けない。
長く恐ろしい間があって、勝負はギラっと刀が一ぺん光っただけできまる。

  東宝DVD-BOX『AKIRA KUROSAWA THE MATERWORKS』付属ブックレット内
  映画評論家・山田宏一氏による「解説」より引用

かつてどんな作品でも見られなかった勢いで噴き出した血は、
アクシデントによるものでした。

黒澤明と、彼を取り巻く才能と
三船敏郎、仲代達矢の迫真の演技、
そして映画の神のほほ笑みが、
すべて揃ったことで、この名シーンは生まれたのでしょう。

このシーンのほか、全編にわたって殺陣の迫力がこの映画の見どころ!
当時のポスターも、めちゃくちゃかっこいいです。
……しかし! この作品の魅力は、殺陣だけではないのです!!

1962年1月1日 初公開時の半裁ポスター(イメージ)

黒澤明監督は言っています。

『用心棒』と『椿三十郎』の評判を聞いてみると
若い人は『用心棒』を、
年輩の人は『椿三十郎』がいいと言う。
後者の方が幾分でもストーリーにユーモアがあって
鋭さ一辺倒の今までのものと違うところが
受けたのかもしれない。

  東宝DVD-BOX『AKIRA KUROSAWA THE MATERWORKS』付属ブックレット内
  黒澤明監督のコメントより抜粋引用

ユーモア!
そうなんですよ、このユーモア!

黒澤明 全30作品の中でも、こんなにリラックスした雰囲気は他にないんです。

といっても、過去の黒澤作品の中に、ユーモアがなかったわけではありません。
戦前戦後の喜劇王・エノケンこと、榎本健一をキャスティングして
歌舞伎十八番の『勧進帳』を音楽喜劇に仕立てた
『虎の尾を踏む男たち』(1952年4月24日公開 ※1945年頃に制作され、一度GHQに接収されています)もありますし、黒澤作品の常連である藤原釜足や千秋実といった役者陣が醸し出すユーモアに、私たちはいつも和まされています。

でも、そうじゃないんですよね。
この『椿三十郎』のユルさっていうのは。

若き日の加山雄三、田中邦衛たちが演じる若侍たちの情熱と短慮。
三十郎の苦労を次々と無駄にする、その無能ぶり。

昼行燈と揶揄される城代家老・陸田の、頼りなく見える振る舞いと、
非常に有能に見えるが野心に取りつかれた大目付・菊井、
裏で糸を引く次席家老・黒藤といった人物との対比。

陸田の奥方と娘の、天真爛漫さと礼儀正しさと美しさ。

粗暴に振舞うが心根が優しく人情に厚い、椿三十郎と
抜き身の刀のように野心を隠さない、自信家の室戸半兵衛のつながり。

こうした人間模様が、非常に良く描かれていて、
今も色褪せません。

この魅力は、観ていただければ分かります。
未見の方は、ぜひご覧ください!

Blu-rayを購入するなら、やはり『用心棒』とセットになっている北米Criterion版がお勧めです!

  

【作品メモ】
1962年1月1日に公開。『用心棒』の大ヒットを受けて、三船敏郎演じる三十郎の活躍を描いた続編作品だが、前作とストーリー上の関連はないため、単体で楽しめる。『椿三十郎』の元となったオリジナル脚本は、山本周五郎の短編小説『日日平安』を忠実になぞらえる形で、『用心棒』の制作前に完成していた。毎日映画コンクール 日本映画賞、第十三回ブルーリボン賞 最優秀作品賞、シナリオ作家協会 シナリオ賞ほか受賞多数。

【監督】黒澤 明
【原作】山本周五郎『日日平安』
【脚本】菊島 隆三:小国英雄:黒澤 明
【撮影】小泉 福造:斎藤 孝雄
【照明】猪原 一郎
【美術】村木与四郎
【音楽】佐藤 勝
【キャスト】椿三十郎/三船 敏郎:室戸半兵衛/仲代 達矢:見張りの侍 木村/小林 桂樹:(9人の若侍)井坂/加山雄三:千鳥/団 令子:黒藤(次席家老)/志村 喬:竹林(国許使用人)/藤原 釜足:陸田夫人/入江たか子:菊井(大目付)/清水 将夫:陸田(城代家老)/伊藤雄之助 ほか

■Blu-ray発売元:Criterion
『椿三十郎』北米Criterion版Blu-rayパッケージ裏面


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