ビートたけし著『やっぱ志ん生だな!』書影

昨日、この本(↑)を書店で見つけて購入しました。
『やっぱ志ん生だな!』ビートたけし著

いい本です!

私の敬愛するビートたけしが、
これまた敬愛する古今亭志ん生(5代目)を
語っているのだから、つまらないはずがない!

それも、予想以上に素晴らしいんです。

落語、漫才の話芸から映画まで、
表現の方法について、実に核心を突いた話が
非常にさりげなく開陳されているのです。

たとえば本書28ページ

やっぱり、ムダな説明をしないっていうのが大事。
そのへん、志ん生さんは頭がよくて、言葉選びが簡潔なんだよな。

という前振りから、たけし自身が弟子たちに

「お前の出身地までの道のり、教えてみろ」

とテストした昔の話に続きます。
すると、

 「上野から電車で二時間乗って、そこからバスでさらに三十分行って――」
 なんて話し出すんだけど、何分かかるとかそんなのは余分な情報なんだ。
 たとえば、こう説明してみたらどうだろう。
 「電車で行くと窓から見えるのはずっと田んぼと畑です。あとは仁丹の看板が何度も出てきます。そして駅に着くと、待っているのは松山容子の盆カレーの看板です」

たけしさんは、「電車で二時間」という情報を
「余分」なもの、と断定しています。

これは、要するに「二時間」という数字では、
「まぁまぁ遠いところ」という情報しか
伝わらないからです。

時速100kmで二時間移動したとして、
そこはやっぱり都会かも知れないですよね。

だから、そんな情報量の少ない言葉よりも、
「田舎の光景」を豊かにイメージさせる
言葉をチョイスして畳みかけた方が
よっぽど自分の田舎の様子が伝わるという
話です。

これ、とても重要なノウハウです。

そのほか、頭の中のイメージを上手く
伝える発想や技術がさりげなく満載
されていますので、興味のある方は
ぜひご一読ください。

今は亡き昭和の大名人・古今亭志ん生の
落語は、聴く人の脳裏に、落語の登場人物
たちが生き生きと生活する様が自然と
浮かびます。
私も、数少ない録音を、ほんの少し聞いた
に過ぎないのですが、それでも大好きです。

落語のケタが違うというか、すごいんです。

まだ聴いたことがない!っていう方は、
まぁいけないんでしょうが、まずは
Youtubeで検索してみてください。

もう絶版になってしまったようですが、
昔、映像の残っていない志ん生の魅力を
私たちの世代にも伝えるべく、
『山藤章二のラクゴニメ』(VHS)という
シリーズが発売されていまして、これが
最高に良かったんです。

私は、『火焔太鼓』を買ったんですが
本当に素晴らしかったです。